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例えばビタミンが十分かどうかを検査するために、赤血球中のトランスケトラーゼの働きを測定するという検査をほとんどの医師は行いません。
まずそのような症状の患者が来て、一通りの検査をして異常がなければ、精神的な問題だと考えるのがふつうで、ビタミン不足を疑うということはまずないのです。
万が一ビタミンの不足を疑ったとしても適切な検査をしなければ分かりません。
ビタミンの血中濃度をただ単に測定してもあまり意味がないのです。
ビタミンは適切な場所で、適切な働きをしているかどうかが重要なのであって、血液中にただ単にどのくらいあるかを検査してもほとんど意味はないのです。
例えばビタミン一つとってみても、血液の中を流れる赤血球の中にある酵素(トランスケトラーゼ)の働きを見てみないとその潜在的な不足は分からないのです。
血液中の濃度だけで判断するというのは、たとえていえば電車に乗っている人の数だけで判断するようなものです。
電車の中が満員だからといってその人たちが職場に行ってちゃんと仕事をしているとは限りません。
ほとんどの人がそのまま遊びに出かけてしまえば、たくさんの人が電車に乗っていたことには、何の意味もないのです。
疲労、食欲不振、気分の落ち込み、イライラ、頭痛、動悸、物事に集中できない、痛みといった症状は、古典的なビタミン欠乏症の前段階で、潜在的なビタミン欠乏症とでも呼ぶべきものです。
最近はつらつとした人を見かけることが少なくなりました。
これらの症状は、子どもも含めて典型的な現代人の姿といえるかもしれません。
電車で塾通いをしている小学生が、駅の売店でドリンク剤を飲んでいる姿は、いまでは珍しくありません。
パソコンや音楽界の成功者たちの好物はハンバーガーとコーラというパターンもよく見られます。
テレビで見る彼らは、はつらつとしているでしょうか、目に輝きがあるでしょうか。
昔はぼんやりしている人を、覇気がないといったものでした。
学校の先生は、何か心配事や悩み事があるに違いないと、そういう生徒に注意を向けていました。
ところが最近では、覇気のある生徒のほうが少ないので、ぼんやりしている生徒のほうが当たり前になってしまいました。
生徒ばかりか先生のほうにも覇気がなかったりします。
昔は、やる気のない、覇気のない先生に教わっていると、授業を受けていてひどく疲れたものでしたが、いまでは先生も生徒もぼんやりしているのがふつうになってしまいました。
いまの日本には、飢餓はほとんどありません。
食べるものは豊富にあります。
体も大きくなりました。
スポーツを見ていると体が大きいほうが有利なことが多いのも事実です。
しかし、栄養が豊富だと体は大きくなるのでしょうか。
体が大きいほうが健康なのでしょうか。
家畜の飼料に抗生物質を混ぜると、成長が早くなり、早く体が大きくなるため、抗生物質を使わない場合に比べて、3分の1くらいの期間で出荷できるようになるそうです。
低カロリーの食事のほうが、長生きしたという動物実験もあります。
また、長寿の人たちがおしなべて小柄なのも不思議です。
体が大きくなったのはいいとしても、以前には少なかった病気が増えてきました。
ちょっとしたことで骨折する。
すぐお腹をこわす。
風邪をひきやすい。
アトピーや端息などアレルギーも多くなりました。
女子高生の2割以上が高コレステロールです。
若い人たちに関しては男女ともにアメリカ人よりもコレステロールが高いという統計もあります。
子宮内膜症や子宮筋腫が増え、生理痛や生理前症候群も多くなりました。
また、ある程度の年齢の女性は、ほとんどが更年期障害で、中年女性が2人いれば、その話題が必ず入るほどです。
自然気胸も増えました。
がんでは、以前には少なかった大腸がん、肺がんなど欧米に多かったがんが増えてきました。
心筋梗塞など以前には少なかった心臓病も増えましたし、脳梗塞も増えてきました。
これらは、みな多かれ少なかれ、ビタミンやミネラルなどの潜在的な不足が関係しています。
例えば、クスリや環境汚染物質の解毒は、ビタミンが欠乏することによって大きく失速します。
ビタミンの不足は、体を守る免疫機能にも悪い影響を及ぼします。
いまの典型的な日本人のライフスタイルを考えてみましょう。
朝食は摂らない、昼はファーストフード、息抜きに缶コーヒー、夜はアルコールと外食、残業があればカップラーメン。
子どもも朝食は摂らない、学校がなければお菓子、塾の前に菓子パンとコーラ、夕食は家で食べてもデパートの総菜かレトルト食品、夜食はカップラーメンで、勉強の代わりにテレビゲームで夜更かしのし通しです。
若い女性は、なぜかやせ願望が強く、ダイエットと称して、平気で食事を抜いたりします。
食事での唯一の関心事はカロリーだけというのがいまやふつうになりました。
ファーストフードの店でも、カロリー表示だけはしてあるくらいです。
飢餓状態のときには、かえって肝臓に負担がかかります。
極端なダイエット中には、肝臓の状態を示す血液中のGOTやGPTという酵素が高くなります。
さらにダイエットは、カロリーを落としますので、同時に必要なビタミンやミネラルなどの栄養素も以前より摂れなくなることが多くなります。
栄養療法医はダイエット中の栄養管理には特に気を使います。
不足するビタミンやミネラルなどの栄養素は、サプリメントで補いながら管理していくのです。
ひと昔前までは、現在のような食生活は異常だ、というのが世間の常識でした。
ところがいまでは、こういう食生活が当たり前になってしまって、食事は空腹を満たせばいいか、たまに家族で外食に出かけて、おいしいものでも食べればいいということになっています。
食べすぎで胃の調子が悪いと思えば、胃のクスリ、風邪で調子が悪いと思えば、風邪薬。
風邪薬といえば、使い方で、びっくりさせられるのが、予防のために飲むというものです。
風邪薬は単に風邪の症状を無理に抑えるだけで、風邪を治すわけでも体を強くするわけでも何でもないのです。
風邪をひいて熱が出たり、咳や痰が出たりするのは自然な体の反応で、ウイルスや細菌が働きにくいようにしたり、ウイルスや細菌を体の外に出そうとするための防御反応なのです。
風邪薬は、熱や咳という現代社会では邪魔で不快な反応を止めてしまうに過ぎないのです。
体が風邪と闘うための免疫を強くしてくれるわけでもありませんし、場合によっては、必要な体の反応を抑え込んでしまうために風邪を長引かせこじらせることもあるのです。
さらに風邪薬は、免疫を強化する働きのあるビタミンCも体の外に速やかに出してしまうので、予防になるどころか逆に風邪をひきやすくする可能性すらあります。
私なら、万が一風邪をひいても風邪薬は使わないし、私の患者にも使いません。
知らないにもほどがあると思いましたが、風邪薬を早めに飲め、早めに飲めというコマーシャルが繰り返しお茶の間に流されていることを考えると、大事な試験の前に、大事な会議の前に、風邪をひかないように飲んでおこうと一般の人が考えるのも無理のないことかもしれません。
現在の一般的な食生活と安易にクスリを飲むようなライフスタイルから考えると、古典的欠乏症こそ免れても潜在的な欠乏症はまん延しているものと考えられます。
次にビタミンB群を例にとって具体的にビタミンの潜在的欠乏を見ていきましょう。
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